欠け月
凛々椿

電線のすき間に光る欠け月
本当の私は いつも煙草を手に思いを口にしてた
風のあたたかさや
寒さ
楽しさ切なさを
今朝の風はあの日に似ていたよ 悲しみの模倣のように
冷たく
日差しゆるく
雨は泣いて
国道1号線 車の走り抜ける音の向こうに
京浜東北線
東海道線
京急本線
横須賀線その交互に音をかき鳴らし軋み霞む踏切の音 懐かしい
感覚の記憶
ねぇ あの日に似ていたよ 屋上で手を繋いで飛んだ
誰に話しかけるでもなく私は煙草を手にし
空を見上げる
あの時の言葉は もう遠い

一人では生きていけない一人ではダメなんだ
指に絡まった糸はほどけ
あっというまにどこかへ飛んでいってしまったけれど


思い出の空の下からあまたの線路を眺める
故郷から愛した人の町へとつながる
始点と終点と、その続き
ふちをいろどり
いつかやがてみちゆくものが
いつの日か幸せでありますように
本当の私に戻らなければならない私は
まだ くゆるものに冒されている
そうなのだけれど











自由詩 欠け月 Copyright 凛々椿 2011-11-09 00:30:17
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