月夜に歩いて
佐和

おく病で
部屋から出ないと決めた日
には 味わえない感覚

外に出たのは良いけど
人目気にして強がって急ぐ
身では 見れない風景



じぶんにとって
自然で無理のない
歩き方だと
カンタンに道が開けたりするんだな


うつむき気味にアスファルト見て
見たくない前なんか見ない
歩幅も小さめでかまわない
気が進まないけど
歩いてみようか

そんな態勢ではじめるのがいい


赤信号に当たり
軽くストレッチ

青に変わって横断した
頃には
思い出し苦笑なんか
している自分

信じられないけど嘘じゃない


今日一日の楽しかった
場面なんか振り返ると
抑えても口角あがってる



どこかの家から夕飯の支度
焦げた匂いなんか漂って
ツッコミ入れながら歩いてく


気配を感じて振り向けば
ネコ様がしずかに佇んで


帰り道半ばくらいには
ちゃんと遠く前を見て
背筋のばして歩けてる


すれ違い様 道を譲って
くれたおじさんに
ありがとうと念じるように思いながら


高校生の頃には
考えられなかった
歌の一節をおもいだす



   
うつむき加減に歩く少女も
       きっと笑い こらえてるんだぜ




もう少女とは呼ばれない年でも
そんな風景の中のひとりに
なれたんだ と唇結んで目を細め
ポケットの鍵に指を伸ばした







自由詩 月夜に歩いて Copyright 佐和 2011-11-08 19:30:26
notebook Home