骨身
岡部淳太郎
枯葉が吹かれて
かさかさと鳴る
その音を骨身にまでしみこませて
つぎの角を曲がる
そこを過ぎれば 私の影は
通り過ぎたところには残らない
背後に置いてきたのは私自身が
思い出として残らない場所だ
枯葉が掃かれては
捨てられるように
私はなかったことにされる
それでいいのだ
どうせこの骨身は
無駄に渇いたまま
だからこそ
しみるのだ
枯葉が吹かれて
かさかさと鳴る
その音に不吉な予兆を感じながら
私は骨だけの身の上になってゆく
どんな飢渇とそれに応える雨が
この先に待っているのか
この世界のどこかで
枯葉が果てしなく落ちては
はなれてゆく ふたたび
あつめられるために
(二〇一一年十月)