ハルジオン
Lily Philia




((あたしたちは
 みんな
 かみさまのこども
 だれひとりとして
 ひつようをなくして
 だれひとりとして
 とどまることをしらない))


ああ、けさも、あたしたちはあたしたちのせかいで死にだせないでいる。

こんなにも明るくて
こんなにも深すぎた
あたしたちの祝日は
丁寧に丁寧にまどいしれ
かきあつめてはまた
続きをつくる

ああ、けさも、あたしたちはあたしたちのせかいで生きだせないでいる。


 ((花はそうしづかに
 小さくただ
 かたちを失って
 花はそう二度と
 けさのようには
 ならないの
 けっして))


けさのような日には
ほとんどのものが
忘れないよう
忘れないようにと
けれども確かに聲をあげ
耳の奥のように細く
白く切れそにしている

 それを知るのがとてもひどい

 それから端の方からぼんやりとしてくる

けさのように
花は死んではゆかないけれど

「「あたしはおんなのこでいたかった。
「「あたしはまるいものでいたかった。
「「あたしはやわらかいものでいたかった。


とびこんでくる いきつぎもできないまま
うまれるためだけにきみにてをふろう
きみにとくべつのなまえをあげよう
せなかをつんざき まじりあう こえ こえ
こまったようにわらい にぎやかに
きしみをひっぱりあう あたしたち
 「あのね、あのね、
 きみのことがすきなんだよ。」
わぁーい!!
にげちゃおよ!!
にげちゃおうよ!!
あたしたち
ゆるされちゃうまえに
すべてのけさから
ゆるされてしまうまえに


・・・・・風が強かったから、ね?

 →だんだんだんだん傾いてく→→→
 

まったくのはじめから
無造作に殺されていったけさは
ひとつも反応などはしていなかった
屈曲してゆく端から
端へと重なってゆく花の色
そして
音楽

   ら
     らり 
     
  るるるる 

 
 ステンレスの窓枠へ触れた指先も今は
  ひるがえりカーテンの白りらり
 上履きを脱ぎ捨てたあの教室も今は
  すりきれて靴下の白るらり
 あたしが部品としての風景も今は
  ちらばってゆく白日夢
 絶え間なく 白 白 
  るりららら りりりりり 
 

    急速にスピードをあげて


自分の白い足だけをみつめていたあたしは
けだるくいびつで
浮きだった熱をとびこえようとしていた
そこいら視界はモノクロへと歪み
窓際の水槽の中で
白い白い光の反射が
飛び火していった
あたしの心臓を掻き消していった
同じ重さを持つ空が
じりじりと焦がしてゆく


  金属製の耳鳴り

  こどもたちのピアノ  

  しづかなしづかな蝉時雨


強烈な反射の中
何もかもがが聴こえなくなる瞬間
美しい場所へゆこうと思った
あたしは違った穏やかさで笑いあって
美しい場所へゆこうと思った


  ブランコをいっぱいに漕いでさ
  あたしは確かに
  視界を切り崩して
  世界を寸断してゆく
  いつまでも
  ぱたぱたとスカートを泳がせていたい
  いつまでも
  ぱたぱたと髪を躍らせていたい
  って 
  云ったのに  

 あたしたちは加速してゆく

絶望に浸かりながら
射し込んでくる
花の逆流を掻いている

 
 ((晴れ渡る祝日に
 あたしは
 あたしたちの秘密を
 知らず知らずのうちに
 落としてきてしまって
 いた))


「「あたし、ヲトナになっちゃうんだって。
「「あたし、ヲトナになっちゃうんだって。
「「いつか。


たいそう美しい六月の空でした
鉄錆の匂いと痛みが熱を帯び
あたしに風がふいている
あたしたちの祝日に
風がふいている
ゆっくりと
さらにやさしく
ああ、けさのように
さえぎるものもない
ハルジオンの丘で
ハルジオンの丘で








自由詩 ハルジオン Copyright Lily Philia 2011-11-04 20:15:42
notebook Home 戻る  過去 未来