Snowwriter, 未完成品
ballad
失われた八日目の記憶の中に雪原があった。雪の上に立てられた僕らの家の中には、静かに多くの人が住んでいる。静かな人たちは、物音を立てずに部屋の中を動き回っているが誰もお互いを認識できない。そして誰もしゃべろうとしないこの部屋の中で、彼女が大声を上げる。部屋に響く彼女の声。そしてそれに反応しない静かな人達。彼女はそれを見て怒り狂った。そして彼女から八日目の記憶が失われようとしている時に、涙がこぼれた。それを見た静かな人の一人が、ゆっくりと彼女に近づいて挨拶をして外へ出て行く。彼は、この吹き荒れる吹雪の中どこにいくんだろう。
失われた八日目の記憶の中に僕たちの家はずっとある。彼女が吹き荒れる吹雪を見て「吹雪の中消えていった人は、雪のなって戻ってこない」と悲しそうに言うのを僕は黙って聞く。彼女が静かな人たちの間を通って、暖炉に薪をくべる。炎が勢いづくと火の粉が静かな人の一人の頬に飛ぶ。熱い、とも言わない静かな人に彼女が慌てて息を吹きかけて、熱を持った頬を冷やそうとする。彼女の暖かい息を吹きかけられた静かな人は何かを思い出したかのように、彼女の手を握って、挨拶をし終えると外へ出て行く。彼はこの吹き荒れる吹雪の中どこにいくんだろう。
失われた八日目の記憶の中に、めんどくなった。