おしえてほしい
キメラ




いつかきっと
そんな先のことはわからない
いままでもそうだったように
未来を確実な強度でたもつこと
そんなことは一体誰ができたんだろうか
過去に二回結婚を約束したりもした
それを失ったあと
目の前にはいつもぐったりとした
とても揺るぎないものが横たわっていた
パチンコにいき
酒で悲しみをごまかしながら
自分を特別な感性の巨匠だなんて
おかしな疎外性を納得には至らない
微弱ないいわけにしたりもした
自虐的に世界を舐めまわし
不変を憎悪しながら刹那的な刺激だけを信じる
金の許す限り仕事おわりに車を走らせ
金で買えるあらゆる快楽に身をまかせた
言い切るものを破壊し続けた感覚だけが
研ぎ澄まされながら
彷徨ってはとりとめもなく
壊れていく自分をわらっていた
壊れちまえ
ぜんぶ失ってしまえばいい
金も絆も己の過去も自尊もすべて

ひとりのソープ嬢が言った
溜め息ばかりついていると幸せが逃げるよ
ふざけるな
聞いたようなことは
もっとうまく言ってほしいもんだ
杓子定規なことをいいやがって
おい答えろ
幸せってなんなんだ
この場末の歓楽街に明日すら捨てた男に
幸せなんかない
あってたまるか
クリトリスをいじってやると
女はイった
お兄さん最初恐いひとかと思ったけど
そんな聞き飽きた出だしに
また絶望をにじり込みながら
おれはずっと世界を馬鹿にしてまわった

一輪の花をもった男が時期はずれに
戦時中の身なりで深夜のコンビニに入ってきた
この花の名前しりませんか?
いまそこで女性にプレゼントされたんだよ
一斉に身をそらす店内に愚かしい殺伐が溢れる
疎外感を憎悪に変え
男は怒鳴り始め ゆくは右翼の教本のような
演説を始めた
言ってダメなら
男はついに店内を破壊し大声で周囲を罵倒しはじめた
おれは真裏にわざとたってみた
何故だかはわからないが
この男がからんでくるのをまってみたかった
目と目があいおれは瞳孔を見開いた
なぜか男は突然おとなしくなり
オレにたずねた
この花の名前しらんかね?
いまそこで女性にプレゼントされたんだよ

わからんよ
あんたが知らんように
おれにだってわからない
それはいけないことか
男は長い間おれの目をのぞきこんだ
警察がきて男を連れて行く
おとこは終戦のような屈託のない笑顔で
振り返りオレをみて
ありがとお〜 ありがとお〜
と4回叫んだ

幸せ
幸せか
幸せがもしあるのなら
おしえてほしい
おしえてほしい
明日になんて言わないで
いま
ちゃんとわかるように教えてほしいんだ






自由詩 おしえてほしい Copyright キメラ 2011-11-01 14:41:47
notebook Home