nai-tari make-tari
竜門勇気


1980年代の午後は
こんなに明るくなかった気がする

僕は、歯磨きが嫌いな子供で
今は、命がかかるまでは歯医者に行かないと決めた大人
ルールや倫理が
どんなにえらくっても
大人の中身はいじくられない

僕達は
確かに泣くために生まれたわけじゃない
誰一人
そういうふうには
できてはいないけど
だけど


セックスはあっけなく終わり
ただレールの上でしゃっくりを何度したか、みたいな
冷たいゴミが残った
多分、こういうことは
繰り返しが価値なんだ
外でなにが起きたって
心の中身はさわれない

僕達は
確かに負けるために生まれたわけじゃない
誰一人
そういうふうには
できていない
だけど

僕達は
確かに永遠に続くようには生まれない
誰一人
そんなことを思って生まれるわけじゃないけれど
だけど

靴箱の中をのぞきこむ
古びた蝶番がきしんでいる
僕は確かに
永遠を生きようとは思わないけれど
結局持って歩けるのは今という時間だけで
僕の後を歩く人は
きっとこの景色も違って見えるんだろうとこわくなった

僕は
確かに僕の真ん中にいるのだろうけど
寄り添うものもないこの点を
誰か一人すら
見ないのだろうと
のんきな絶望で生き続けている



自由詩 nai-tari make-tari Copyright 竜門勇気 2011-10-27 23:18:33
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