モノクローム
「Y」

写真集の中の写真をうつした写真家は

もう死んでおり

この世界にはおらず

いまも死につづけていて

モノクロームに象られた

すべすべとした紙のなかに籠って

かたくなに孤塁をまもっている

その気配が

印刷された写真のなかにある

うつしとられたもの以上に

わたしの心をうごかすのです

写真集のなかでモノクロームに象られた橋頭堡では

死につづけている人が番をしていて

ひんやりとした余白の向こうから

こちらをじっと見返しているようなのです


自由詩 モノクローム Copyright 「Y」 2011-10-15 08:55:08
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