星月夜
カワグチタケシ

草原をバトルフィールドに見立て
匍匐前進が一時間以上続いている
周囲から仲間たちの気配も薄まり
冷たい月と数えきれない星々の下

体重の半分近い装備を背負い
身長ほどの銃身を両腕で抱え
少女兵士はひとり
草を分けて進む

虫の声が大きくなり
葉のしずくが汚れた頬を濡らす
そして涙と夜露の境目が
わからなくなる頃

いずれの側でも捕虜たちは帰される
少数の行方不明者を除いて

 


自由詩 星月夜 Copyright カワグチタケシ 2011-10-14 22:47:10
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