Noni
salco

Noniは1回笑った
Noniは2回笑った
いや、実は1回半だったのだ
0・5とは、淋しい内省なのだった
こうして人は気安い笑いの1つ毎にも
小さな頭蓋の中の
千数百グラムの己が脳みその
泥混じりの海底から
いちいち死貝を拾わねばならない

Noniは生涯において
7千9百9十6回笑った
一方、Ninoはおよそ
5万6千3百回笑った
それは痙攣発作や震顫に近いものであったが
その数さえ決して多いとは言えない
何故ならNoniもNinoも等しく
安寧という望ましい幸福の
公正証書は得られなかったのだから

気休めはゴマンとある
それはCDとCDケースの
工業生産高に匹敵するほどだ
世の中に、だが安らぎは無い
いや、人の裡に。
麻薬は手に入っても
楽園など何処にも在りはしないのと同じ

呟く蟻。
それは己が脳みそを
生涯這い続けなければならない
それが所謂、健康な人生なのだろう
慢性胃カタルの蟻。
彼は己が脳みその全景と
常に対峙していなければならない
そして、呟き続ける。
叫びも亦、呟きの1つでしかない
こうして1人荒野に佇む時
汚れた胎盤で身をもがく時
ああ、人間は声さえ持っていない


自由詩  Noni Copyright salco 2011-10-14 00:00:38
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