はねのない蝶
ゆえづ

手紙をちぎってください
ひとつふたつ色づくまえに
すべてを忘れほどけたつぼみが
身をよじり花ひらく頃
すでにその使命を終えたわたしを
しっかりと見届けたなら

夢うつつのまに時は過ぎ
ありがとうと殺して
また忘れてゆく
ひとつふたつ笑って手折る徒花

まだ血はながれる

すっかり伸びた髪を
鏡の前でひとり結い上げて
誰かのために絹の下着をつけてみる
風邪をひいたのは
慣れないスカートを履いたためでした
蝶をつかんでしまったためでした

指にうつった鱗粉をうなじにすり込む

そんな日も悪くないさと
どこにでもある話


自由詩 はねのない蝶 Copyright ゆえづ 2011-10-02 19:04:22
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