歩くことについての考察
小川麻由美

陸橋に佇む豚がこちらを伺っていました
以前どこかで会った気がしたのです
毛並みに見覚えがありました
豚と目が合い 気まずい思いがよぎったので
そそくさと その場を後にしてしまいました
豚の目の後味の悪さを引きずり歩きました

目的地に着いたと思ったとたん
ここは目的地ではないと気付きました
戸惑う私にネズミが話しかけてきました
しかし 猫を飼っているから
ネズミとは関わりたくなかったのです
親切そうなネズミでしたが
私は ろくに返事も返しませんでした

ハイヒールが削れるほど歩きました
足の痛みもピークに達しました
痛みの感覚の助けもあり思い出しました
ここが目的地だと
歩けなるまで歩いたここが
目的地だったのです
7センチのハイヒールで
歩けなくなった ここ
ここが目的地だったのです

ふと気付いたこと
目的が思い出せないのです
あったはずの目的が
いや そもそも
目的がなかったのかもしれないのです
そう 目的がなかったのかもしれないのです

目的が
目的が
目的が


自由詩 歩くことについての考察 Copyright 小川麻由美 2011-10-02 16:55:23
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