君に
シャドウ ウィックフェロー

もういない
時間とともに思い知る
致死量飲みたい日にち薬



君が買い飲み残してるアブサンを
飲みきることのできない未練



暗闇に瞳を凝らせば柔らかな
視線がなぞる日常の部屋



ひと以外のものを載せてはならないと
エレベーターにされた貼り紙



ふと君が後ろに続く気配して
エレベーターで押す開ボタン



時は過ぎゆくことの別名
そして記憶は戻りくる代名詞



失ってやっと気がつく思いなら
癒えることなく疼け傷跡



死に顔に化けて出ろよと囁いて
眠れぬままにじっと待つ夜



宙に身を躍らせたとき君の眼は
何を見ようと開かれてたの?



戻せない時を遡行し
くる記憶
十九十八…二歳一歳



そのままの湯呑みやお茶碗
箸立ての先っぽ少し剥げてるお箸



なぜもっと話せなかった恋愛や欲や願いや
幸せのこと



小さめの骨壺えらび
君と飲む夢を叶えに
行きたいなバー



決意して家を出ていく君の背に
声かけたいと今日もみる夢



幸せを求めることに照れていた
そんな気がして見つめる遺影



なんやろな
言葉を探しているときの
君の口振り遠い眼差し



我慢してどんなことにも耐えられる
君にかけ過ぎていた信頼



お姉さん 自分のことをそう呼んだ
君にとっての家族とは何



赤ん坊の君はいつでも腹ばいに
両手を挙げて空を飛んでた





短歌 君に Copyright シャドウ ウィックフェロー 2011-10-02 14:22:18
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