オーニソプター
竜門勇気
高校生のスカートが
湿った風ではためいて
僕は地獄の底にいる
気持ちのいいことは
部屋の中にしか無くて
外にある
綺麗で頭がおかしくなりそうな風景は
僕とは関係のないことだと
やっと気づいたのさ
休耕田でオーニソプターを飛ばしていた
くすんだ色の虫が歩くたびに沸き上がっては消えていく
眼鏡の内側で小さな宇宙が生まれて死ぬ
黒いフレームの外は多分永遠
尾翼の調整をしながら泥濘を駆けまわって
汗で汚れたレンズを赤いシャツで拭ってると
永遠に触れた気持ちになった
そしてどんな困難でも乗り越えれるって気持ちになって
はちきれそうなぐらいゴムを回して
力いっぱい空を見上げたら
大きなヘリが農薬をばらまきながら
僕のオーニソプターをぶち壊して飛んでいった
一歩一歩
ただアスファルトがどれくらい硬いか確かめるためによろめいていく
前へ進んでるつもりなのさ
僕にはそう見えるのさ
時々ガードレールや車がとんでもないちからで
僕を引っ張り寄せる以外は
前へ進んでるつもりなのさ
固定翼はぐしゃぐしゃになって
柔らかな土の上で汚く洗われている
バルサの大きな破片は驚き転げた僕の背中にある
となりの田んぼで
得意げにヘリは旋回して
これ以上無く美しい光を背負って飛んでいた