φの唄
雪路
φの唄を
歌います
謳うわけでは
ありません
それは無償で
あるからです
一つ
羊飼いが
ビジネスに参戦するようです
世知辛いという言葉の意味を
誰からも教えられず
通俗的最低レベルの
学識すらない彼は
若々しさだけで
勝てると信じ込んでいる訳です
私が彼に出す処方箋
それはもう
『荒廃』の景色の美しさ!
しかし彼は5年後
原宿に巨大な鉄塔を二対
割り箸を立てるかのように
器用かつ大胆にやってのけるのです
彼はそこで初めて
人間というものの安さを
見下す面白さを学んで
生涯を終えるのです
二つ
自分を鏡に映すのが大好きな少女がいました
苛められることを最も恐れているのです
ですからサンドイッチの味よりも
自分が他人からどう思われているかで
頭が常に一杯で
味覚も視覚も衰えていくのです
そして耄碌し
ほんとうに美しいものを知らなくなり
結果的に、醜くなる訳ですが
そんな彼女の最後の砦は
まあ、学術で御座いましょう
程度の知れる、実践的哲学な訳です
三つ
現代人をねぎらう
圧巻の夕暮れで締めた後の
金を食うことで膨張する
闇の街のなかでは
信号機や街灯のみが
真実の輪郭を保障するのです
財力を根こそがれ
路上に捨てられた女は
最も妖艶な姿で
最も妖艶な夢を見るのです
尤もその最期の夢は
夜月が
彼女の名誉を傷つけないために与えた
救済措置に過ぎない訳で御座いますが
φの唄は
酒を旨くする
肴のような役割であれば
いい塩梅なので御座います
『無知』の灯の
いくら誠実謙虚になろうとしても
消えない頑固さ!
それを摂理で片づけるという
似非原理主義者を罵倒するという
シニカルなブラックジョークを
何よりも賞賛することで
抗えない明日の来訪を
すこしでも歓迎しようということなのです