キリマンジャロの生首
花形新次
登山仲間の間では有名らしい
大雪の日に
どこからともなく
飛んできて
いきなり登山者の肩口に噛み付いて
そのままどこかに連れ去ってしまう
連れ去られた者は決して戻ってくることはない
その名も「キリマンジャロの生首」
大雪の日に滑落して
首がもげて死んだ女がいた
捜索隊が探し出したときには
胴体だけが残されていて
首がなかったという
消えてしまった首が
その正体というわけだ
この話は
少年少女怪奇シリーズに載っていて
小学校に上がる前の僕は
4つ年の離れた兄貴から
毎晩寝るときに読み聞かされたものだ
子守唄代わりに
シアワセな子供だったなあ・・・
おかげで
いまだに明るくしないと眠れないんだ
「キリマンジャロってなんじゃろ」
そんなギャグで返すには
僕はあまりに幼すぎて