時の砂丘
月乃助
時の器に
夜がすこしづつ満たされていく
眠りついた月の横顔
埋もれた砂時計の砂丘は、はだしのぬくもり
天よりふる砂を見つめては
閉塞されたガラスにふれる
砂の音はやまず
一筋の銀の糸が悲しみの砂山をきずく
あしもとのどこかから
笑い声/泣き声がする
聞きなれた 父の
小さな妹の
老いた母の
亡くなったものたちのたちの声
わたしは心のうちに 死が終焉であると
悲しいものだと 決めてしまっていたのです
いいえ
死とは、
死んだものたちとの あらたな関係性の始まりに
すぎない
死んだものたちは
生きているもののうちに
永遠の命をやどしているではないですか
指のあいだをすべり落ちる
砂のぬくもりを確かめ
わたしは、死を埋葬し
時の砂丘に墓標をたてる
それが唯一の答えであるかのように
月明かりに
どの砂の一粒も光をはなちはじめ
時の堆積は今宵
やさしい香りをわたしに
もたらした