何が人を謙虚にさせるのか
小川麻由美

2006年10月16日
森美術館にて。

講演、シンポジウムより抜粋。


火の女
もの凄い炎の手前に立つ
女のシルエット
突如、女は水に飛び込み
炎は序々に水面のような様相を呈して行く



本当の力で世界を変える
本当の力とは技術と啓示の一体化
物質的なものと形而上的なものの一体化
そこには身体と外部の接点の緊張が生じる

技術
トリックスターとしてのオリンポスは火を盗んだ
テクネとして使い方次第で良くも悪くもなる

啓示
宗教的なもの
開いてわかる
叙述して見えないことを示し明らかにし
表面の下にあり存在するが触れられない
例えば愛

技術
暗部にあり見えない部分を知る
筏を捨てるように
人は技術に縛られないようにしなければ



ビデオ・アートは電気エネルギーで描く画材
内なる目 カメラの目
エネルギーポイントに集約され
全体主義的だった

デジタル化された今日
一視点ではない多様性を帯びる

ビデオで木を撮ったとする
光学的作用に過ぎないのではないかという疑問

ジオットの絵画の光線の直線性にカメラの光との共通性を見出し
カメラとイタリアルネッサンス絵画の類似に気付く



日常は知覚の剥奪と共に過ぎて行く
臨死体験と呼ばれるような時
スローモーションのようなイメージの体験の強調

現代は目の特権性が顕著
身体の恍惚を忘れがち
カメラは 見えないもの 心で生まれた像
言い変えれば不可視の像を扱う
光とは見えないもの



守ってくれる存在の死で感じる大きな喪失感
彼にとっての芸術のインスピレーションは喪失であり
喪失は人を謙虚にさせる
生命は聖なるもの

人は意図的に倒れることを学び
捨てる
そして落ちる





私の感覚は
最初の水に落ちた女のシルエットに集約されていった

ビル・ヴィオラとの出会いは
私にとって、いいものだったようだ


自由詩 何が人を謙虚にさせるのか Copyright 小川麻由美 2011-09-21 22:23:59
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