イルマオ
やや

たろんと濃い夜が引かれる
水平線に揺れる海の端
海岸には塩の霧が立ち込め
撹拌されるライトの粒
カモメが飛び立ち
低空飛行で水面をめくる

きれい と、
改めて口に出さないと
慣れてしまう
無頓着に置かれる
焦がれ続けた美しさ

振り返って名前を呼ぶ
正確に発されることのなかった
、その音、符号
褐色の肌が逆光で黒く染まる
その黒い髪と瞳は
まだ故郷を覚えている

si

離ればなれでずっと
こんなにも遅くなった
とても似た者に見えたのに
なんにも似ていない
私たちの構成は波に沈む

その血に映る
夢みたいな景色を抱える君
の心、の中
舞う泡沫の影に人魚を見つける

会話の終わりに綴られた
"beijous"

きれい、であることを
知ることもない、
君、は、私とは違う

"obrigado"
"nei,obrigada"

星に手を伸ばす
水面に揺れる対岸の兄弟


自由詩 イルマオ Copyright やや 2011-09-21 13:51:12
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