もしも僕が白鳥だったなら
カワグチタケシ

*
僕たちは午後から出発した
地面に句読点をつけるよりも速く
きれいな風が僕たちを追い抜いていく
足もとを通り抜ける

小さな音が風を追いかけていく
白いページにやがて日が傾き
それぞれに足音をたてて進む坂道
それは不確かな傾きで

ときに平坦なでこぼこ道につづく
声がかすれて風に飛ばされていく
ときどきなにかを言いかけては言いよどみ

言葉が息を詰める改札口
そして恥ずかしげな抱擁のあと
僕たちは手を振ってわかれた

**
もしも僕が白鳥だったなら
もしも僕が白鳥だったとしても
変わらずこの道を歩いていただろう
午後の乾いた日に照らされて

僕は白鳥として切符を買う君を待ち
やはり君にかける言葉がないだろう
もしも僕が白鳥だったなら
腹と足と水かきを澱んだ水に浸して

もしも僕が白鳥だったとしても
空を飛んで君に会いにはいけないけれど
長い首のうえの小さな脳はいつも

君の声を
君のかすれた語尾を思い出すだろう
もしも僕が白鳥だったなら


Contains sample from Pink Floyd


自由詩 もしも僕が白鳥だったなら Copyright カワグチタケシ 2004-11-20 10:59:52
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