孤高
花キリン
狼が孤高の動物だったとは
群れをなして狩りをする
知恵者であることはわかっていたのだが
青い月に向って吼える姿が
孤高だと一度も思ったことがなかった
気高さなどというものは
持って生まれた毛並みからくるものだと思っていたから
いくら努力しても身につかないのは
毛並みの悪さだと小さい頃から諦めていた
もしかすると狐の化身が狼であるとすれば
山神様への無礼を恐れずに
野山を走り回りながら身につけたもの
マタギの一発の銃声などは
気高さを表現するプロローグだったのかも知れない
死という存在とは無縁だったから
孤高という文字が生まれてきたのだろうが
昼と夜の二極化された孤高にも
また新たな矛盾は生まれてくるのだろう
狼が孤高の動物だったように
似たものが人間界に存在していても不思議ではない
群れることもなく知恵者でもなく
ましてや尾を振りながらすり寄ることもなく
気高さとは遠くかけ離れていたとしても
老いた気高さについて考えている
重ね合わせるものはそう多くはないのだが
あの時代が孤高の時代であったのかも知れない
錯覚であったとしても それは紛れもなく
寄りかかれる丈夫な意思であった