孤高
花キリン

      

狼が孤高の動物だったとは
群れをなして狩りをする
知恵者であることはわかっていたのだが
青い月に向って吼える姿が
孤高だと一度も思ったことがなかった

気高さなどというものは
持って生まれた毛並みからくるものだと思っていたから
いくら努力しても身につかないのは
毛並みの悪さだと小さい頃から諦めていた

もしかすると狐の化身が狼であるとすれば
山神様への無礼を恐れずに
野山を走り回りながら身につけたもの
マタギの一発の銃声などは
気高さを表現するプロローグだったのかも知れない

死という存在とは無縁だったから
孤高という文字が生まれてきたのだろうが
昼と夜の二極化された孤高にも
また新たな矛盾は生まれてくるのだろう

狼が孤高の動物だったように
似たものが人間界に存在していても不思議ではない
群れることもなく知恵者でもなく
ましてや尾を振りながらすり寄ることもなく
気高さとは遠くかけ離れていたとしても

老いた気高さについて考えている
重ね合わせるものはそう多くはないのだが
あの時代が孤高の時代であったのかも知れない
錯覚であったとしても それは紛れもなく
寄りかかれる丈夫な意思であった


自由詩 孤高 Copyright 花キリン 2011-09-17 07:20:01
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