偶然
花キリン

         

そうですねと 軽く合槌を打ちながら
何を話していたのだろうか

まだ余熱はあるのだが
その方に出会ったのは偶然なのかも知れない
私の心は少し疲れていて
絵便りの中の風景に恋をしていたようだ

棘の刺さったような声で
私はその方に声をかけたのかも知れない
礼儀などとは私の言い分で
なんて失礼なと思ったことだろう

それでも立ち止まって
山や海のコントラストを歌にしてくれた
今まで素通りしてきた記憶が蘇ってくると
なんとも素敵な恋心だ

余熱の中から生まれた偶然
それから幾つかの
言葉のやり取りをしたような気がする

そうですねと 軽く合槌を打ちながら
何を話していたのか
失礼のないようにと
思いとどまろうとしながらも饒舌になっていった

三日三晩こん睡状態にあった
多くの余熱を抱きかかえながら
なんどもあの絵便りの町に出かけていたのだ

あの方に出会ったのは一度だけだが
それからすっきりと心が目覚め始めている



自由詩 偶然 Copyright 花キリン 2011-09-08 07:24:40
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