空腹殺人
長押 新


腹が鳴っていた
腹が鳴っていた
私は舌舐めずりして
昔から知っていた通り
指先を剣にして
そうやって人を
刺していたのだ

腹が鳴っていた
腹が鳴っていた
死んだ人はちっとも
動かないでいて
顔には出ないけれど
とても恐れている

腹が鳴っていた
腹が鳴っていた
底の方にこびりついている
届きやしない悲しみが
生きている方に流れ込む
満たされると急に
辺りは静まりかえっている




自由詩 空腹殺人 Copyright 長押 新 2011-09-01 15:06:01
notebook Home