一年で一番忙しい日
月山一天


スターバックスのレジで小銭を数えていると、
後ろに並んだ消防士さん達が、
そろそろ
一年で一番忙しい日が来るなぁと
つぶやいた。

クリスマスが近づくと、
自殺者が多くなるんだそうだ。

私はフラフラと人ごみの中、
ガードレールに行き着く。
雪達が
地面にキスを落し始めると
私は急に心細くなって、
暖かいコーヒーを
冷たい頬に引き寄せた。

この
一年で一番
美しい日、
神の神子が
人類の魂を救うべく生まれて来た
祝福されるべき愛の日に、
人々は

逝ってしまう。

生まれて来れた喜び忘れ、

死んでしまう。

さっき、
雪に刻んだ

LOVEの文字、

もう見えない。

しんしんと

頬に降る涙は、

誰にも見えない、
届かない。
あぁ、私は

何処までも、
何処までも、

人ごみの中で、

ひとりなのだ。


自由詩 一年で一番忙しい日 Copyright 月山一天 2004-11-18 13:08:07
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