街路樹
マチムラ

冬の彼らは
さながら磔刑にされた聖人
葉の仮衣を落として裸をさらし
いつの間にか澄んできた空を
悟りきった瞳で仰ぎ
死にゆく夕日の断末魔の叫びに応えて
沈黙のうちにあらわな本性になる

ああ彼らは
夕日を影に
黒い輪郭に暮れてゆきながら
なおどくどくと脈打つ毛細血管の形で
空に体を投げ出して消え入ろうとする
そのあふれる枝先から
行き場のない夕焼けが
血しぶきのように広がってゆく

そしてああ
私たちは彼らを
街路樹などと親しみを込めて
気安く呼ぶのだ

そしてああ
私たちは彼らを
大地を隷属させた記念として
目に付く場所にさらしておくのだ
畏れも忘れて




自由詩 街路樹 Copyright マチムラ 2011-08-29 21:35:16
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