パスタは絶対にフォークとスプーンで食え
ＴＡＴ
パスタは絶対にフォークとスプーンで食え
ワンスプーンの上にくるくる巻いたらそれがルール
それが一口の定義だ
口紅が鮮やかな流行色で
最期皿に
二センチ三センチのパスタのこま切れを幾本も残すような女は
相手にするな
何とかのペペロンチーノとか何と何のカルボナーラじゃなくて
単なる『アーリオ・オーリオ』や
シンプルな『ボンゴレ・ロッソ』を出してくる店の
それを食べて果たしてうまいかどうかが基準線
イタ飯屋の前菜なんか
『うまくて斬新』が最低限のクリアーライン
ラーメン屋は昭和からやってる店を選べ
入店に勇気を要するようなハードな外観の店を選べ
入店と同時に
ななめ四十五度の中空に目を注ぎ
品書きをチェックせよ
ラーメン
ラーメン(大)
ライス
ビール
着席
おぉ
大当たりだ
美味い店に決まってる
カレーラーメンだの
Ａ＋Ｂセットだの
オーガニックだの
『当店ココ流儀！餃子の食べ方！』だのは相手にするな
まちがえましたと言い放って引き戸を閉め振り返るな
人生は有限で
君は尊い
まずい飯に時間を割いてる暇は無いんだ
ところがカレーは
紆余曲折して
何でもかんでも放り込んだルーの方が深い
だから多分キチガイがやってる店のカレーは
実は美味い
『腰痛に効くハイパー！』とか
『漢方全部入り！！』とか
そういう謳い文句を並べているけど
半紙で手書きで店頭に並べているけど
風雨の事は思慮外なんだろうか？
このぺらぺらの手書きの半紙は
午後から確か大雨予想だったけど
そこらは分かって出してるんですか？
そういう店は絶対にうまい
臆するな
お釣りを渡す手が常軌を逸して震えているぐらい
何でもない
ナンでもない
一方コーヒー屋は混んでる華やかな店に限る
カランコロンのベルと同時に
鮮やかにボーイが秀逸にシュッと来る高級店に限る
鼻を突く香ばしい豆の香り
がやがやしたヤクザと欲求不満なマダムの体臭
きっとそこには在る
銅版焼きのバターとレモンの垂れるホットケーキだの
ざっくり厚切りのビフカツサンドだの
素敵なサイドメニューがきっとあるさ
スパゲッティはくれぐれも繁華街の喫茶店で食え
ショーウィンドウに埃がたまっていて
中空にフォークがハリガネで浮いているナポリタンを
くれぐれも食え
おにぎりは火傷しそうな炊き立ての白米を
指の股までジャリジャリ音がする粗塩で
ぎゅうぎゅう愛情込めて握るように
中身？不要です
おかず？不要です
すぐ食べないのなら
海苔ぐらい巻いても
バチは当たらないんじゃないでしょうか
フレンチは一から十まで挑戦だ
見たことあるメニューが一品でも出て来たら
『馬鹿にするな』と言って
倍の勘定を置いて帰れば良い
中華は至極簡単で
ただ食えば良い
胃にもたれるなら二流のお店
店外に出た折に鮮やかな風が一陣抜けて
爽やかな気持ちで連れをこの後何とか抱こうと
そういう気持ちになっていたら
それは超一級の
飯店
ＵＦＯも一平ちゃんも水はよく切れ
カップヌードルはフォークで食うように
ギザギザポテチは重ねて食うと美味いよ
大トロは紫蘇を巻け
結局はあんたも俺も
フライパンで肉を焼いた後の油を醤油といっしょにご飯に混ぜて食っちゃうとか
ソーメンにもマヨネーズかけちゃうとか
そういう系だろ？
