流されてここにきた
麦穂の海

流されてここにきた
民主主義という言葉があって
首をかしげながらも
今日まで何となく暮らしてきたのだが
決定的な大事故が起きて
これはヤバイと
遅まきながら気づいたのだった


流されてここにきた
水が汚れた


流されてここにきた
空気が汚れた

流されてここにきた
原発が爆発してしまった

流されてここにきた
こんなに恐いのに
私たちは今だ原発をとめることすらできない
嘘みたいだろ

こんな大事故が起きたのに
私たちは今だ原発を止めることすらできない

流されてこの島にきた


水は甘く
空気は芳ばしい
失われた春が
空のてっぺんから
しゃんしゃんと

島に満ち溢れていた


流されてここにきた

安心して雨水にぬれて
息をふかぶかと肺に吸いこみ

暗く閉じられた窓を開け放って
洗濯物を太陽の下にたなびかせる

あの人がいる

ほんの少し前3月11日以前には
確かにあった私たちの日常は

流されてしまった

流されてここにきた

棄民

流人たちと

えどになった土地に生きる私たちの運命は
400年前と

およそ何も変わっていない


le samedi 1er Mai 2011
@八丈島














自由詩 流されてここにきた Copyright 麦穂の海 2011-08-25 23:48:16
notebook Home