貝
吉原 麻
かつぅんと冷えたロックグラスを傾けると
薄緑色のとろりとした液体が
喉を
焼きます
下る感触
そのうち
そのうちと思っているうちに
また
また今夜も
甘さとほのかな痛みの虜となって
男とともにいるのです
痛み それは
色名はあるけれど 色見本のない世界
という台詞を思い出し
確かに痛みの感覚は人に伝えにくいものだと 痣を見て思う
片方の足をいつも引きずって歩く男はいつまでたっても
そうして 憧れのままなのです
そうわかっているうちは
そのうちは 悔しいのだけれど
今夜もまた
行ってもいいですか