天文台へゆく
梅昆布茶
毎週土曜日
僕がひそかに尊敬していた先輩が
その熊のような
かわいらしい
大きなぬいぐるみのような
からだと
それに
そぐわない
ひとなっこい笑顔で
星の世界の
水先案内人を
つとめる
市民天文台に
彼女と子供とぼくは
行こうと思う
街のはずれの
荒川沿いの
ちょっとした
美しい丘陵地帯に
釣りもできる池や
遊歩道や
気持の良い芝生や
恋人たちや
くつろいだ家族連れの笑い声や
お弁当の
唐揚げや
春には
桜の花が
夏には
花火大会の
そんなこじんまりとした市民の
くつろぎを
何気なく受け止めてきた
穏やかな
のどかな公園の一角に
ややちいさめの白いドームがある
皆から象さんと呼ばれる先輩が
市の要請で導入した
反射望遠鏡
夜7時からは子供達の
小さな驚きや
大人たちの笑顔やらなにやら
なんだか素敵な
バザーを
やっているように
柔らかい時間
先輩は小惑星に名前がついている
でもおそらくよほど正確に計算して
追尾しないと
その光を
とらえることは
できないだろう
先輩…その小惑星って軌道を逸れて地球に落っこちてきちゃうじゃないすか〜?
ああ…
いい女がいればなあ…
こんな感じのひとで
けっこうジョークを
とばしながら地味な工場の片隅で
望遠鏡をつくり続けてきた地上の星
学芸員である先輩が
僕にいう
隣にいるのは
つぎの奥さんかい?
ええまあ…
そうなるかもですけどね…
よくまあお前みたいなじゃがいも男がなぁー…
いくらなんでもそれってひどすぎません?
でも僕は今でもそんな先輩が大好きでいる
先輩と同じ気持で星空を観る自分が
ちょっと
誇らしくて
懐かしくて
いっしょにつくった
秩父の高原牧場の星降るような眺望の良い山頂の片隅の手作りの天文台を思い出す
ときどき訪れるその公園と
あいかわらず口のわるい先輩と
子ずれでじゃじゃ馬娘の彼女
白いドームの天文台とそれらの
素敵な童話は
僕のこころの
星の遊園地なのかもしれない