当たりくじ
寒雪



眩しくて照れくさくて
思わず顔を背けたくなる
輝かしい朝の陽光が
ぼくの背中に降り注ぐ
その足元には
最早自分の言葉を
紡いでいくことが出来なくなった
明後日の方角を見つめる
きみの終わってしまった体


あと三十分早く起きていればとか
死ぬ時は痛かったのだろうかとか
いったい何が原因なのか
今となっては
考えても無駄なこと
でもきみの生きていた体は
ぼくの心の中で
ゴールを目指して走り続けていて
ぼくの気持ちをかき乱す


起きたまま覗いた夢の中は
驚くほどたくさんの色に溢れてて
そこで次々と
シャボン玉を割り続けては
無邪気にはしゃぐきみの
零れ落ちる笑顔に
足元にあるきみの硬直した骸が
タチの悪いホラー映画みたいで
停止ボタンを押せば
きれいさっぱりなくなってしまって
昨日まで見慣れた
きみの背姿が現れるような気がして
もちろんそれは
背筋が寒くなるジョークでしかない


いつの間にか
月の姿が見つけられるくらい
辺りは暗くなっている
一瞬
そこにある死体が
ぼくのものであるような気がして
思わず目を手で擦ってみる
別に
そこにある死体が
ぼくのものであっても構わなかった
むしろそれが自然
でも
きみは月の光でデスマスクを模り
ぼくは闇の吐息で頼りなげに輪郭を滲ませる
その差はと問われてもぼくにはわからない
ただ
たまたまきみはビンゴを引いた
明日はぼくがきみに続いて
当たりを引いて死神に喜ばれて
命を散らしていくかもしれない
そう
たったそれだけの差異


皮肉かもしれないけど
ぼくはきみの抜け殻を見つめていて
初めてぼくときみが
同じ地平線を見て
闇雲に歩いていたことを理解した
その点だけは
ぼくときみは同じだったんだね
平等だ
と語るにはあまりにも悲しい物語


明日がビルの影から
ぼくの命を狙撃する
その危険を避けながら
ぼくは明日も
あてもなく歩き続けるだけなのだ


自由詩 当たりくじ Copyright 寒雪 2011-08-20 11:25:35
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