幼い君に教わったこと
N.K.

人の嫌がることはするな
と幼い君に言ってきたつもりだけど

君の大切な髪留めを取って逃げてしまった
君のいとこの困った赤ちゃんを捕まえて
とにかく髪留めを取り戻し
代わりの物をあげて済まそうとした時
空になったポテトチップを入れる円柱が
目に付いたので
父親が適当にそれを渡して赤ちゃんと
言っても君より二歳下の彼を母親のもとへ
早々にかえそうとした時
君は一旦それを取り上げてしまったね

父親は思わず仕返しかと息を呑んだよ
そういう負の連鎖はどこにでも
見られたりするものだから
残念ながら

次に何をするかと思っていたら
(ほんとは注意するつもりでいたら)
流しでその容器を洗い始めたね
君の方が何かちょっと怒っているような様子で

洗ってからあげるの? と聞くと
容器から眼をそらさないで頷いていたね
赤ちゃんに渡すのは汚いものではいけないと
君は考えていたのだね

断固とした君の眼差しが伝えてくれた
断固として動く君の手が物語っていた
人との関係とは何か済ませてしまうものではないと
底に相手を思う繋がりがあるべきだと

人の嫌がることはするな
と幼い君に言ってきたつもりだけど
幼い君に教わった
人の嫌がることをするなと言って
その実その人と関わるなと言って
いたのと同じだね

幼い君に教わった
人が嫌がることでも
その人のためになると思ったら
断固としてやってあげるべきだ
それが友人と言うものだ
そういう人との繋がりがあったほうがいいんだ


人の嫌がることはするなと言ってばかりで
この父親は少々疲れて
少々人間嫌いになりかけていたようです

ありがとう


自由詩 幼い君に教わったこと Copyright N.K. 2011-08-17 20:14:45
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