現実の話
榊 慧
「褒められたりすれば単純に嬉しい。」
*
俺は共感とか理解とかこのままずっとされないんではないだろうかな、でもそれって多分普通なんだろうな、なあ。トーはそう思ったからそう口に出して呟いた。瓶に入っている毬藻だけがそれを聞き流す。有機物。
みんなみんな理解しているフリをしているだけなんだよな、理解しているって言ってる人は理解しているっていうアピールをしているだけなんだよな、そんでそのフリが完璧だと思ってるから俺がこう思ってる事も当然気付かない。だって出してないもんな。トーの思考には秩序はない。自覚していた。
トーは此処連日眠れていなかった。頭痛が治まらないままだった。つまりいつものあれだった。
トーは死にたくなると何かしらよく食べた。そしてまた死にたくなるのだった。
*
「俺は頭が悪いから、うすっぺらい人間だから、」
「だから、」
続かない。
*
トーはいつも、例えば相手に対して理解できないとかは思っていなかった。少なくとも。少なくとも理解すべきだと思っていたし、その通り相手を結果理解できなかったにしろ、理解しようと努めた。努めていた。でも無駄なのかもしれないと思った。殺したい人間が発生するときがある。それなのだった。仕組まれたように感じるのだった。俺が「もう嫌だ」となるように仕組まれてる、
「死にたいと思って普通(または当然、だったか)ですよ」
…じゃあ死ぬのが一番いいんですよね。
トーは冷静にそう思った。
トーは自分の身体を恥じていたし体質も恥じていた。恥じるに値するものであった。そして一番自分で自分の性質を忌み・嫌っていた。忌み・嫌っている。過去現在未来進行形。
「たださびしいだけなのかと思ったんだよ。」
でも違うみたいなんだ。
トーは今日は殺人しなかった。現実では。