漆黒
千波 一也



夜、は
首筋からこぼれ落ちて
かすかに甘い蜜のにおいを
隠している

命令に逆らいたい鳥たちが
もうじきそれに気づくだろう

囲いはすでに
万全なのだ



風がかくまう絨毯のうえで
猛毒は騒ぎもせずに
涙している

おのれの涙と
夜のしずくが
とけ合うように画策している



炎はその背に
氷の縁を負っている
ゆらゆら揺れて、
せめてもの
高熱で

飛び入りたがる者たちを
必死で睨みつけながら



夜、は
ちいさなものほど守れない

歯車が
明白であることだけが
やすらぎと信じて
巨大なものたちが
永遠じみて、
いく





自由詩 漆黒 Copyright 千波 一也 2011-08-12 11:33:02
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