蝉の泣く
相差 遠波

ペッシャンコの蝉が
歩道に転がっていた夏の朝
甘臭い生ゴミの袋の横に
カラリと乾いた屍一つ

カラッポの中身で七日間
うるさく喚いた命の遺したモノ
おい おまえそんな空しい姿になるため
七年間も土の中に居たのか

だけど嗚呼そうだ
人間の中身も所詮排泄物
そんな物が詰まっているよりか
カラッポになって七日間
うるさく喚ける命の方が上等かもな

声が出ない
訴える声が
そしてヤツラは
雑音としてしか
声無き声が聞こえない
三年に一回や
四年に一回だけ
自分らはここぞとうるさく喚くのに

たいそうなお題目をかかげた
薄っぺらな紙が入った
甘臭い生ゴミの袋の横に
カラリと乾いた

屍一つ


自由詩 蝉の泣く Copyright 相差 遠波 2011-08-09 10:04:09
notebook Home