梨の花が散るとき
かんな



そういえば
姉の名前は
梨の華と書きます
はじめての孫に祖父が名づけました。

昨日の午後に
私はのこぎりを持って
全身を使って
梨の枝を切り落としていました
父と一緒に
汗だくになって
とりあえず五本ほど枝を落としました。

その夜になって
病院でベッドに横たわる祖父を見舞いました
決して「じいちゃんの梨の木、切ったんさね」
とは言えなくて
たまに開く目をじっと
逃さないように見つめていました。

六十歳近くになってから開墾し
今まで二十数年
広大に広がっていた梨の畑は
白い花で咲き乱れています
枝を切るたび
花びらが散って
祖父の命を思ってしまいました。





自由詩 梨の花が散るとき Copyright かんな 2011-07-29 18:22:48
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