濡れ髪
藤鈴呼

濡れた髪は ずっしりと重く
何か 不吉なものでも
背負ってしまったかのような
切迫感に 駆られる夜

ドライヤーで 乾かすと
スッキリ 軽くなるから
何かを 失ってしまったような
不安感に 苛まれる

そして 気付く
質量は 変化しない
そんな法則が 有ったなぁ
どの 教科書に
書いてあったっけなぁ

記憶ダケを まさぐって
眠る夢の狭間に
扇風機を かけてみる

本当は 涼しい風が 欲しいから
最初から 熱風なんて かけずに
一石二鳥で 心も髪も 身体までをも
乾かしたい

けれど
ドライヤーの熱が
濡れた髪には 丁度 良いようで

また 汗だくに なりながら
上空から 熱風を 翳す

持ち上げる手も
乾き始めた細い毛も
鬱陶しくて 眠く なるまで

何かを失ってしまったような 錯覚や
何かが乗っかったような 重苦しさで
頬が 歪む

私の涙が 横髪に 張り付いて
離れない

ドライヤーでも 扇風機でも
乾かないのです

故に 泣きたくなってしまう 夜

あの夜から 私
朝シャン派に なりました

日差しは 無理矢理にでも
前向きな思考を 連れて来るし

そもそも 時間が無いので
余計なコトを 考える必要も
無いのです

洗う前の ふわふわだった 髪が
妙に ネコっ毛で

折角セットしたのに
朝イチの 鏡の前で
不機嫌になったことも
忘れさせて くれる

もう一度 濡らしたら 良いんです
今度は どんな滴を 纏ってみましょうか

喜びの? 平穏の? 希望の?

瞳から落ちる涙なのか
髪の毛を伝う滴なのか
悩む必要が 本当に なくなったのなら

いっそ
自然乾燥でも 良いのかなぁと思う

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自由詩 濡れ髪 Copyright 藤鈴呼 2011-07-28 21:28:34
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