リア充のひと
恋月 ぴの
犬猫とは違うことぐらい
判っているよ
※
でもね
薄汚れた服でサンダル引き摺ってた女の子
大切にしてもらっているのかな
パートのお母さんと
いつも家でタバコ吸っている男のひとがいる
夕ご飯作ってもらえなくて
お風呂に入れてもらえないから髪の毛は汗でひっついてて
女の子のこと邪魔だと思っているなら
こんなわたしでも里親になりたい
※
恵まれた暮らしなんかしてないよ
決して日当たりの良いとはいえない小さな部屋で
ひとと話したのはいつだったか
会社が休みだと話し相手は誰もいない
いらっしゃいませ
ありがとうございます
挨拶だけは上手になったけど
※
わたしの帰りを女の子が待っている
新しくはないけど洗いたてな木綿のドレス
髪の毛はさらさらで
開け放した窓からの風に輝いて
お母さん、おかえりなさい
駆け寄る笑顔がわたしを待っている
※
いつかはきっと気付く
わたしとは
性格も顔立ちも異なる赤の他人がわたしの部屋にいて
当たり前のように
わたしのファンデーションを使っている
そんなもんだと思う
それでもわたしは欲しているらしい
※
野良のために買い込んだキャットフード
わたしでも食べられないかと缶詰のラベルに見入る