ヨードチンキと水筒
藤鈴呼

檻が有るから 開放感を得られる
生身だから 傷を感じられる

あたかも 当たり前のように
してやったりの 訳知り顔で 呟くけれど

実際に 川を渡った記憶が 有るかい
足の裏は 固いから
ちょっとや そっとの痛みは 感じ難いと
君は 豪語 するけれど
感じない 訳じゃあ ないんだ

小魚を 捕まえる 為に
彼等も 生きて いるんだけど
僕等が 生きて 行く為だとか
至極 尤もな 理由付けをして
正当性の 旗を 掲げて
歩いて 行くんだ

タイヤでは 慣らせない
アスファルトとは 隔絶された 小川を
チロチロと眺める セセラギに
チロチロと 舌を 出しながら
チロチロ 舌なめずりを しながら

ヒントは 清流の中に 有る
透明すぎて 石ころが 良く見えるから
直ぐには 気付けないんだけれど

石の裏に 蠢く 生物の痛みを
本気で 知りたいと 思ったならば
ポンプと 水中眼鏡を 準備しなよ

これからの季節 凍ることは 無いんだから
靴下なんて 脱ぎ捨ててさ
石ころの上で 乾かしとけば 良いんだよ

長いこと 波に揉まれた 石ころは
丸いから 痛くはないって それは嘘

本当は ゴツゴツ してんだよ
本当に ゴロゴロ してんだよ

透明度が 高い分だけ
運が良いと 信じて生てね

右と左 どちらを先に 出そうかって
楽しみながら 悩めるんだから

其れでも 小石に絡まった ツタだとか
切っ先の鋭い 誰かの投げた ペットボトルで
怪我を するのかも 知れないから

ヨードチンキと 水筒だけは 手放さずに
小脇に抱えて 進んで行ってね

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自由詩 ヨードチンキと水筒 Copyright 藤鈴呼 2011-07-22 02:56:52
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