遠い昔に死んでいてしまいたかった。
折口也

僕は遠い昔に生まれ
すでに死んでいてしまいたかったな
神話は失なわれ
青空はなんにもない
空虚な哀しみに
剥げ落ちてしまった
今日の空を見上げると

夜の美しい闇も
ざわめきのライトに暴かれて
物の怪のあらわる隙もない
耳をすますと
どこからか行き場を探し続ける
物の怪達の哀しみが
幻聴の中にきこえてくる

そうでなければ
もっと、もっと、遠い
未来に生まれたかったな
魂を持たない
一体の人造人間として
愛による哀しみに
揺らがないような

今日の空を見上げると
僕は哀しい
生身の体をあからさまにされて
神の棲処も破壊され
雲だけが傷痕のようにやさしい
僕は遠い昔に生まれ
もう、死んでいてしまいたかったな










自由詩 遠い昔に死んでいてしまいたかった。 Copyright 折口也 2011-07-20 11:53:03
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