2つの輪
藤鈴呼

右の輪と 左の輪を
ゆっくりと 近付ける

磁石のように 反発し合って
上手く 絡み合わないけど

元は 同じ 光の輪なんだ

算数の時間は 良かった
1+1=2

これに 疑問を持たぬから 単純なのだと
自らを 貶める訳でも 無くって

二桁の足し算を
数行の ノートブックに書いて

答えを導き出す 瞬間には
一本 線を引く

それで キリッと姿勢を正す

数学の時間が 始まって
自由な服装から 制服に シフトした

数字ばかりの世界から
言葉で説明する必要が生じた

手にした コンパスで
二つの円を 描き
穴が 開くほど 見つめる

穴が 開いたのは
少し 傷ついた 思春期の心と
ノートブック

其れダケなら 更正できた
問題は 下敷きだった

大好きな あの人の 切り抜きを
透明な 下敷きに入れて

授業なんて そっちのけで
ニヤつく頬を 引き締めながら
楽しんで 居たのに

一番 大事な部分に
穴が 開いたんだ

あの人が アタシを 見つめてくれる
瞳に 穴が

コンタクトレンズはね
酸素透過しないと
瞳が カピカピしちゃうの

だから きっと 良かったのよねって
思い込ませてみても

何だか 哀しくって
涙が 流れた

穴が開くほど見つめた 穴の底で見つけた
幾つもの 眩き存在は 強く光を放ち
傷ついた瞳を 更に 痛めつける

傷のついた角膜を 宥める目薬は
やっぱり まあるいんだ

ぽとっ と ゆれる なみだの かわりに
ぽたっ と ゆれて あたしを いやした

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自由詩 2つの輪 Copyright 藤鈴呼 2011-07-17 00:01:45
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