九橋街道六時半
竜門勇気


九橋街道六時半
本当のぼくを探して歩いた
自分探し六時半
ぼくは空っぽだっただったのだけれど
なんの問題もなく生きていた

九橋街道六時半前
空っぽを支えて限界がきた
自分探し前夜
ぼくの空っぽの容器はついに砕けた
空っぽの一人歩きが始まった

友達に電話をかけたら
笑い声が帰ってくる
笑い声は今までは空洞の中でこだまして
ぼくはぼくらしく振る舞えたのだけれど
笑い声は聞こえた瞬間に何度か辺りに反射して消えてしまった
ぼくは笑い声に興味をなくす

実家を訪ねて
これこれこうだと話したら
それでも家族だと泣かれた
鳴き声はぼくの肘のあたりを掠って
ぼんやりとした散乱のあと猫に食われてしまった
ぼくは愛情に興味をなくす

九橋街道六時半
ぼくはついに諦めようとここに来た
自分探し最中
結局そんなモノは無いと気づいた
昔はあったんだ多分
必要なくて捨てたんだ
容器だけあればいいって気づいたんだ

九橋街道六時半
すでに明るくなった道路を
ライトをギラギラ光らせたトラックが
とんでもない勢いで走っていく
名もなき空っぽを吹きちぎりながら
ぼくの町を通りすぎていく


自由詩 九橋街道六時半 Copyright 竜門勇気 2011-07-14 12:29:23
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