死人
草野春心



  仕事を終えて部屋に戻ると
  ベッドの上に死人が載っかっていたのだが
  その耳朶があまりに綺麗だったので
  ぺりりと剥がして自分のと取り替えた



  ワイングラスを揺すりながら
  そんな旨のことを彼女は話していて
  蒼白い耳にはイヤリング
  でも一体左右どちらの耳のことなのか



  尋ねようと思ったのだが
  いかんせん僕には口が付いていないため
  歯と舌と喉を不器用に動かす
  閉ざされた黄色い肌の下で





自由詩 死人 Copyright 草野春心 2011-07-11 16:25:25
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