十六歳の夏
長押 新
燃えはじめていた曲線が
少しずつぶれ
カーブでころっと転倒した原付き
キョトンと路上に突っ伏して
ケラケラ笑っていられた
小遣い程度の稼ぎを握りしめて
水が欲しいと騒いでいた
夜中誰もいない私たちだけの
夏だけが寄り添っていて
半透明な絆や愛という言葉を好んで使い
擦り切れた体が痛い痛いと
ケラケラ笑っては麦酒で体中を消毒した
何しろその頃から洗っても取れやしない汚れが
幽霊のようにくっついていた
吸い殻やら
空き缶やら
片付けてから帰る
誰かに叱られて
殴り飛ばされていたくって
そういった苛立ちで
大人になれるというのなら
いつまでも奥底が
鳴り響いたまま転倒してゆれた
私たちは何がしたくて
冷えたコンクリートで眠っていたのか