Schrödingerの猫

二人で買った少し大きめの傘を使う機会もすっかり無くなって
雨上がり落とした涙が水たまりの夏空に一滴の雨を降らせた

(出会い×恋)−別れ÷思い出の数
似たような式を見たことあるな
学校で習った数式は簡単に忘れるのに
あなたのことだけは生涯忘れないでしょう

なんとなく恋は他人、愛は身内に抱くものだと思っていたけど
血の繋がりもないあなたとの俺の間には愛があったような気がしていたんだ

幽霊とか全く信じないタチだけど、どうかいるなら幽霊でもいいから会わせてください
ちょっと怖いけど僕に霊感をください
どうしても会いたい霊がいるんです
その霊にありがとうの一言だけでも言わせてください
なんてここまで言ったらあなたは「アホでしょw」なんて言っていつもの笑顔で笑ってください

あなたの手が動く足が動く 喜ぶ 怒る 哀しむ 楽しむ 笑う表情を見れるおかげで眠くても真っ先におはようと言って朝を迎えられていたんだ

どんな形であれ二度と会えなくなる日が来るって頭では分かっていたけど
そんなことは頭の隅っこの更に断片のようなところに置いていたし
何よりもっと遠くの未来で起こることだと思っていたんだ

元々出会う前は0として
あなたと付き合って+1
別れれば当然−1で0に戻るはずなのに−100以上に感じるのはあなたと作った思い出が100以上もあるからだ

どうして付き合う喜びは有限なのに別れの悲しさは無限なの?
どうして出会ったきっかけは偶然だったのに別れの理由は必然なの?

仕事の帰り道 山手線の窓から見える四季が流れるたびに春夏秋冬の思い出を思い出しては目を閉じ俯く 吊革を強く握る
たまにはあなたの手を握りたいなぁ

未だに今日もやっぱまだ帰りたくないなぁなんて思うんだ
でも帰る場所はあなたと過ごしたあの家しかないから今日みたいな日はデートの時の歩幅で家に帰ってみるよ

鍵穴に鍵を差し込み 後は右に回すだけなのにいつも躊躇う
扉を開けばそににあなたのお気に入りの靴があるのに
あなたは靴も履かずにどこへ行ったの

ベタだけど「おかえり」の一言で心の底から支えられていたんだ
カレンダーにハートマークが付くことはもう無くなって
シングルベッドが広く感じるし すぐ眠れないし 朝は声じゃなく無機質なアラーム音に変わった

どうなってんだよ神さんと問い質しても
「地球の人口が一人減っただけ」
と答えるのでしょう

当たり前のように空は晴れ
風が吹き
雲は流れ
木々は揺れ
蝉は鳴き
鳥はさえずり
犬は吠え
誰かが生まれて
誰かが死んで
雨が降る

二人で買った少し大きめの傘を使う機会もすっかり無くなって
雨上がり落とした涙が水たまりの夏空に一滴の雨を降らせた

(出会い×恋)−別れ÷思い出の数
似たような式を見たことあるな
学校で習った数式は簡単に忘れられるのに
あなたのことだけは生涯忘れられないでしょう

まぁきっとあなたは「男なのにだらしないなぁ」なんて言って笑ってくれる人だから
あなたと出会えて本当に良かった


自由詩Copyright Schrödingerの猫 2011-07-11 00:52:29
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