四万六千日
蒲生万寿

今日の浅草は何時にも増しての人だかり
四万六千日の法要が執り行われる
コジキもカッペもガイジンも
皆ひとえにに観音様の功徳にあやかろうとやって来る

篤い信仰ある人も
観光のついでに立ち寄る人も
赤い鬼灯(ほおずき)を眺めながら
手を合わせ頭を下げている

僧侶の読経と早打ちの太鼓
堂内のざわめきと絶えることなく放り込まれる賽銭の音が
広くて高いお堂の天井に跳ね返され
私の頭上から降って来る 

それは混沌の中にある見事な調和を得た世界

私の後ろには「人生なんて、あっという間よ」と言いつつも
一心不乱に観音経を唱える水商売風の女

ズルかろうが健気だろうが
穢(きたな)かろうが清らかだろうが
ありったけの思い込めて祈るだけ
切なくやりきれないほどに祈るだけ

人の願いの果てしなさを
仏に求めてやまないいじらしさが
数百年も連綿と続く儀式と時代を越えた人の流れを生み出す

「出来るなら幸せになりたい、不幸になるよりは…」

皆の願意は私でも分かる

叶えてあげたいが何の力もない私も
皆と共に心中で祈るだけ

「家内安全」と


自由詩 四万六千日 Copyright 蒲生万寿 2011-07-10 21:42:33
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