四万六千日
蒲生万寿
今日の浅草は何時にも増しての人だかり
四万六千日の法要が執り行われる
コジキもカッペもガイジンも
皆ひとえにに観音様の功徳にあやかろうとやって来る
篤い信仰ある人も
観光のついでに立ち寄る人も
赤い鬼灯(ほおずき)を眺めながら
手を合わせ頭を下げている
僧侶の読経と早打ちの太鼓
堂内のざわめきと絶えることなく放り込まれる賽銭の音が
広くて高いお堂の天井に跳ね返され
私の頭上から降って来る
それは混沌の中にある見事な調和を得た世界
私の後ろには「人生なんて、あっという間よ」と言いつつも
一心不乱に観音経を唱える水商売風の女
ズルかろうが健気だろうが
穢(きたな)かろうが清らかだろうが
ありったけの思い込めて祈るだけ
切なくやりきれないほどに祈るだけ
人の願いの果てしなさを
仏に求めてやまないいじらしさが
数百年も連綿と続く儀式と時代を越えた人の流れを生み出す
「出来るなら幸せになりたい、不幸になるよりは…」
皆の願意は私でも分かる
叶えてあげたいが何の力もない私も
皆と共に心中で祈るだけ
「家内安全」と