コバルトブルー99%
ピッピ

 


 結局僕らは、手を繋ぐことも恐れていたから、きっと、人間なんて外枠は、どうでもよかったんだね。感覚で繋がる、思いは繋がっている。「繋がる」なんて言葉の嘘を、僕らはとうに見破っていた。不器用なんだよ。が口癖だった。不器用なんだよ、人間は。


 どうして、僕らはいるんだろう。僕らは、出逢ったこともないけれど、いる。そこに。ここに。でも、そんなことは、どうでもいい。いること、いないこと、それを意識しなければ何もできないこと。だらしない。僕らはいることもいないことも、前提としない。


 思考は、20億光年の果てへ。しかし、そこは空っぽだ。僕らはいつも、許容範囲を広げて、でもそれが、同時に恐かった。「存在すること」を拡張するのが、とても恐かった。この世は、コバルトブルー99%。存在しても、しなくても。そんな色のような気がした。


 あるとかないとか、こだわりつづけることで、その具象は存在していると暗に肯定している、と誰かが言った。そうなのかもしれないね。僕らはそうやってまた、あるものばかりを肯定し続けているだけかもしれない。ないものはない。いつまでたっても。


 そうして、僕らはいない。忘れてくれ、という残酷なことばを残して、僕らはいない。きっと、どうでもいいような、存在しない場所の、そのまた外側で、僕らはただ、存在したいなあ、ということを口に出した。それだけなのかもしれない。そして、それがふと、あなたの耳と、何らかの原因で「繋がって」しまったなら、僕らはそれを、謝らなくてはいけない。ごめんなさい。忘れてくれ。


 あなたの住んでいるコバルトブルーは、僕らには眩しすぎる。忘れてくれ。さようなら。


自由詩 コバルトブルー99% Copyright ピッピ 2004-11-14 12:19:31
notebook Home
この文書は以下の文書グループに登録されています。
自薦