寺山修司
天野茂典
寺山修司とは3,4度同席したことがある
池袋のホールだったと思うが
机を前に座っていた なんの会か忘れたが
本の中の写真にぴったりだと思った
鉤鼻が特徴だった だが声を聞いていないのだ
サイレントなのだ 作品ではあんなに饒舌な寺山の
声を聞いた覚えがないのだった
寺山修司の全仕事は簡単にはいえないが
言葉と映像・演劇・競馬予想の錬金術師だったのだとおもう
文学青年と決別した学徒立花隆の猫ビルにも
なぜか寺山修司の本が十冊程度並んでいるのはなぜだろう
ある夏の日 映画『初恋地獄篇』で主演を演じた
佐々木英明氏と青森のホテルでお会いし
かれら出身の青森高校や街を案内してもらったことがあった
英明氏も一時は羽振りもよかったが
東京暮らしが辛くなって青森県東津軽郡の実家にかえり
無難に結婚したらしい とうてい博徒稼業に
のめりこんだとはおもえない
かつてはヒーローだった人の面影は堅気ではいられない
もどかしさものこしていた
ぼくたちは弘前の詩人の家まで同行したが
青森ではまだその名がとどろいてはいないようだった
庭の草がきれいだった
弘前駅で酒を買って楽しそうに微笑んだ
海辺の村へ帰るのだ
ぼくたちはさよならをいった
列車から振る手が見えた
東北弁がつばきのように散っていた
寺山修司は一人一番後ろの壁に凭れてステージをみていた
かるく腕組みをしていた 存在感があった
寺山ワールドのにぎやかさはなかった
顔も幾分蒼白でオーデイエンスにまぎれこんでいた
寺山コンプレックス 孤独だから人は声をかけるのだ
渋谷西武4階駐車場400人ポエトリー・リーディング会場
活躍中の詩人をおおくみかけたがなぜか
寺山修司が貝柱のようだった
2004・11・14
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