いぬ
林帯刀
それははちみつのいろ
きんいろにかがやくアスファルト
カーブの手前
かげのように
染みがきえない
きえないでいる
からすの世界はあかむらさきで
いいものだけ光ってる
たとえばおいしそうなトカゲとか
コンビニ弁当のたべかすとか
ひかれた
いぬ
とかね
呼んでる
てをふって
カーブの手前で
昨日のきのう
そこにはいぬ
だった
毛皮と血と肉とほねが
あって
たぶん近所のひとがかたづけちゃったんだ
きれいなきんいろで
光っていたのに
内臓のきれはしくらいはありつけた ?
電線からおりてきて
染みをつつく
土みたいにはくだけない
くちばしにはなにも
ついてこないでしょう?
べったりとしたあの液体
すきだったのにね
もうないのね
あめがふるまでのしんぼう
染みがながれて
排水溝にすべりこんでしまえば
もう
おもいだすこともないでしょう
アスファルトを
つついてくちばしが
ふるえることも
ああほら
小学校のプールの裏
すこしひかりがもれてる
いってみたらいいよ
きっといいものがあるよ
だってあんなにはちみつのいろをしてる
あのあざやかないろはわすれない
きみのうちがわをながれていたのは
はちみつなんかじゃないのを
ぼくはしっていた