明け方の女
はだいろ

22時に、
体験入店のメルマガが届いていたので、
電話する。
2時半くらいになりますと言われる。
交通費をごまかされようとするのを、
きちんと値切り、予約する。
明日は、月曜日なのに。

中村勘九郎が、大嫌いな言葉は、
「一期一会」だそうで、
人とゆうのは、何度も会うから、いいのであって、
一度しか会わないのなら、なんの意味もないのだと。

youtubeやらエロ動画など見ながら、
眠らずに待ち続け、結局、
4時前にやってきた女の子は、
なんと・・・
まあ、なんと・・・
信じられないくらい、
徹夜明けの今の頭で思い出しても、
もしかしたら、夢だったのかもしれない、と思うほどの、
ほんものの、
美少女だった。
女優の、夏帆によく似ていた。
どうしてこんな子が、なんていうふうには、
さすがにぼくはもう思わないけれど、
パチンコの中毒のように、
外れたら外れたではまってゆき、
当たったら当たったではまってゆくのが、
女遊びとゆうものなのだろう。

大人のキスじゃなくて、
ぶっちゅーというような、子供のキスだったけど、
それはそれ、
やがて外は明るくなってきて、
抱いて頭をなでてあげながら朝を迎えた。
一期一会なんて、
意味がないよ。
っていう、勘九郎の言葉の意味が、いま、こころに染みた。

ぼくの彼女は、
ぼくの鼻毛が出ていると言ってくれるし、
ぼくの息がにんにく臭いと言ってくれるし、
ぼくの食べるのが早すぎると言ってくれるし、
でも、それでも、
ぼくの手をにぎってくれる。
ちょっと前までのぼくは、
なにかひとつの欠点があるために、
人は、
風をつついた小さな舟のように、
ずっと離れて行くものだとばかり思っていた。
でも、そうじゃない。
美少女には、もう会えないけれど
(お金を出せば、また会えるけれど、
それは、単なる、次の一回に過ぎない。)
彼女には、
何度も、何度も、会える。
人とゆうのは、
何度も、会うのが、いいんだ。


徹夜明けの仕事は、
トラブルつづきで、
かえって眠気も襲ってこなかった。
彼女とぼくとでは、
食べる事と、
セックスくらいしか、
共通の娯楽がないけれど、
(室井祐月が、たしかそんなこと言ってたな)
それで、
十分だという気がした。








自由詩 明け方の女 Copyright はだいろ 2011-06-27 21:01:14
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