ミルキーウェイ
三条麗菜

夜の空にかかる大きな河を
私はまだ肉眼で見たことが
ないのです

日常生活の光は
私に空を見ることなど
許してはくれない

私が疲れて眠っている間に
胸の奥から生まれてきた
誰にも与えることがなかった星たちが
あの空にかかっているはずなのです

それらは寂しくて
それらは誇らしくて

ミルキーウェイの傍らを
子供たちを乗せた列車が走ります
車窓からは中州にそそり立つ
祈りのしるしが見えたといいます

成長させる力はあるけれど
命を生み出す力はない
そして命の気配はないけれど
命を包み込む温かさがある

それは寂しくて
それらは誇らしくて

あなたの奥から生まれてきた
誰の命にもならなかった星たちも
きっとあの空にかかっている
はずなのです

あなたの求めるものが
私の求めるものではなかった
だから星たちは数を増して
夜の空を覆ってゆくのです
ミルキーウェイの輝きが
美しいと思うなら
それは私たちが
獣ではないという証です
そしてそれは
獣よりも苦しむということの
代償なのです

それらは寂しくて
それらは誇らしくて

夜の空にかかる大きな河を
私はまだ肉眼で見たことが
ないのです


自由詩 ミルキーウェイ Copyright 三条麗菜 2011-06-26 01:54:25
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